さあ、父の診察の時間がやってきた。
僕ら家族は膵臓がんの宣告を受ける緊張感はもちろん、
宣告を聞いて笑うというミッションがあり、
変な緊張感を持っていた。
家族3人が席へと座り、緊張感漂う中
医師が話し始める。
「精密検査の結果が出ましたので、、、。」
「あーだこーだー・・・」
「端的にいうと、膵がんです。」
きた!
僕と姉がクスクスと笑う。
笑い飛ばすまでは難しかったが、
「何ばかなことを言ってるんだこの人は」
くらいの笑い方は出来たと思う。
父はどうだ?
と父に顔を向けると、
ちょっと笑っている。「ハハハ・・・笑」
顔は引きつりながらも笑っている。
うん。
当人にしては上出来だろう。
ガンを宣告されて笑うだなんて普通は出来ない。
姉が父によく頑張ったねと後で褒めていた。
さて、少しは効果があるだろうか?
膵臓がんの診断にショックを受けていた父
ただ、父は予想外にショックを受けていた。
僕と姉は、
父が膵臓がんであることは確定だと思っていた。
だから、
余命3ヶ月だとか、
ステージ4の末期だとか、
そんなことを言われても笑い飛ばそうと覚悟をしていた。
ただ、
父の場合は僕らより覚悟が出来ていなかったようだ。
最後の最後まで、
「膵臓がんの可能性だなんて誤診だろう」
そんな希望を持っていたらしい。
だって、体の不調は一切感じていなかったから。
膵臓がんは末期になるまで症状が出ない。
沈黙の臓器なんだと話をしていたが、
自分だけは違うという気持ちがあったんだろう。
最初は頑張って笑った父の顔は、ショックを隠せないでいた。
膵臓がんステージ2。手術は可能と思われる。
診断はステージ2a。
aの部分がよくわからないが・・・。
手術はおそらく可能で、
それ以外に有効な手段はない。
抗がん剤ができるのは延命治療だけで、
出来ても数ヶ月しか延命出来ないと言われる。
一度ご家族と話しあって、
1週間後にまた来てください。
その時にはじっくり今後の治療方針を話し合いましょう、と。
ゆっくり話せる時間帯に診察を設定しますから、と。
親切な医師に担当してもらえてよかったと思った。
父はショックを受けていたが、
僕らはホっとしていた。
膵臓がんをステージ2で発見できるなんて、
きっととても運がいいことだから。
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